日本のタラソテラピー施設④

「ザ・テラスクラブ アットブセナ」
~沖縄県名護市~
「2000年九州・沖縄サミット」のメイン会場となった万国津梁館、部瀬名(ブセナ)岬に立地するザ・テラスクラブ アットブセナは、沖縄初の屋外型タラソテラピー施設を有するホテルとして2011年にオープンした。海(タラソ)の恵み、島の恵みを提供するホテルを前面にし、タラソテラピープログラムを中心にヨガ、ストレッチ、ノルディックウォークなどの運動や各種スパメニューを取り揃え、沖縄の食材とバランス配慮によるトータルヘルスプロモーション、ウェルネスをコンセプトとした「健康と美の再生」を提案している。
タラソ施設としてまず目を引くのは、沖縄のホテルでは唯一の屋外型多機能海水温水プールである。ホテル名の由来ともなる部瀬名岬の沖合で汲み上げられた新鮮な海水を用い、33℃と36℃に設定された2つのゾーンに交互に浸かることで身体に温熱の刺激を与え、新陳代謝を促進する。本格的な水流ゾーンやジェットバス機能を備え、運動効果やマッサージ効果が期待できる。アットブセナに宿泊する顧客は滞在中は何度でも利用可能となっている。

「タラソバイオツアー」
タラソプール、中東式の蒸気サウナ室「ハマム」、ミクロの海水粒子が放出される休息室「エアロゾルナッピング」の順で専任のインストラクターのガイドで回ることにより、代謝活性と鎮静のセットで交感神経と副交感神経を刺激するプログラムを有する。本格的なタラソテラピーを目当てとした宿泊層、リピーターも徐々に増えているとのことである。

2015年、琉球大学ヘルスツーリズム研究分野との共同で、滞在型ウェルネスプログラム利用者を対象にタラソテラピーのエビデンス検証が同ホテルで実施された。主観的心理評価ビジュアルアナログスケール(VAS)を採用し、タラソバイオツアーを含む宿泊前と宿泊後の変化を調べた結果、『身体のこり(肩・腰)』『疲労度』『ストレス度』『肌の状態』の4項目すべてにおいて改善の方向への有意な変化が認められた(成人58名;男性19名、女性39名、平均年齢44.0歳)。一定数のサンプルによるタラソテラピーの健康回復・維持・増進効果が実証されたことで、学会研究発表もなされている(図1)。

沖縄の亜熱帯海洋性気候の特徴を活かしたタラソテラピー(海洋療法)が体験できる宿泊施設として、富裕層向け会員誌に『沖縄ヘルスツーリズム~健やかな心身を取り戻す旅~』として特集されるなど、海洋性の沖縄食材をアレンジして魅力を創出する美と健康の食養生法(スパキュイジーヌ)など食、運動、休養、癒しのトータルが揃うリゾート型ヘルスツーリズムのモデル的存在ともいえよう。ここでは忙しい現代人が日常から解放されて、ふと立ち止まるきっかけ、自分の体に向き合う、内なる自分と対話をする時間を生み出し、人生の基盤としての健康に気づくきっかけを提供することが最大のおみやげとなるであろう。

琉球大学ヘルスツーリズム分野
ウェルネス研究プラットホーム
文責:荒川 雅志

 タラソバイオプール・ウェルネスアットブセナ荒川雅志 アルゴテラピー@アットブセナ
 ハマム・@アットブセナ エアロゾルナッピング@アットブセナ
 フォルトゥーナ2015タラソテラピー荒川雅志s 図1.タラソテラピーのエビデンス(図師里佳、荒川雅志2015)
特集紙:三菱UFJモルガン・スタンレーPB証券会員誌「Fortuna」(フォルトゥーナ)2015年春号特集pp10-21(監修:荒川雅志)学会発表:図師里佳、荒川雅志、望月明日香、屋比久郁、新垣瞳(2015). タラソテラピーによる心身の健康効果,
日本レジャー・レクリエーション学会第45回学会大会