日本のタラソセラピー施設について①(海洋療法施設)

我が国では「海洋療法(タラソセラピー)」という言葉はいまだ認知度が低い現状だが、北は青森、南は沖縄石垣島と、列島縦断して全国各地の沿岸地域に23箇所の健康増進施設型、ホテル併設リゾート型の海洋療法施設(タラソテラピー施設)が存在している(図1、2015年時点)。

国内最初の施設「タラサ志摩」は、1992年に三重県鳥羽市郊外のリアス式海岸である伊勢志摩に“海と健康”をコンセプトに誕生した。ホテル併設型の施設であり、リラクゼーションリゾートコンセプトを重視するため娯楽施設を設けることなく、海辺の環境のもと長期滞在者がタラソセラピー施術後も心身ともにくつろげる施設設計や空間創造を意図した本格的タラソセラピー施設である。

その後は、四国・香川県さぬき市(クアタラソさぬき津田:健康増進型)や、千葉県勝浦市(テルムマランパシフィーク:ホテル併設型)などが全国各地に誕生した。先進地フランスのタラソテラピーを忠実に取り入れた施設から、地域の特性を活かし日本人に馴染むよう工夫された施設、施設内プログラムにとどまらず、海洋性気候や海洋性食材などを取り入れた独自のタラソセラピープログラムが展開されている。

国内の施設を大きく分類すると、地域の健康増進施設としての役割を果たす「健康増進施設型」と、観光客対象を中心とした非日常的スパ・ウェルネス施設としての「ホテル併設リゾート型」に分けられる。海水の種類は、取水源が表層海水か、海洋深層水かに大きく分類される。(図2)。

アジア諸国のなかでは圧倒的な数の施設数を誇り、一見すると海洋療法(タラソセラピー)が普及しているようにみえるが、世界的には日本の海洋療法、タラソテラピー施設はほとんど知られていない現状である。島嶼国で我が国の先人達の海と共に歩んできた歴史を再認識し、先人の知恵と技術、海洋文化の利活用をもって海洋療法のアジア研究開発拠点形成を進めるべきであろう。そのためには、各施設の努力だけではなく、多施設共同型、産官学医連携による海洋療法の効果実証、地域保健、観光に海洋療法を活用する全国市町村同士の連携など、総合的な『海洋療法ネットワーク』の構築が必要になってくるのではないだろうか。

琉球大学ヘルスツーリズム分野
健康医療食と観光創造プラットホーム
文責:図師 里佳
監修:荒川 雅志

図1,図2. 全国海洋療法施設一覧(健康増進型、ホテル併設リゾート型)