観光を科学する~金沢大学先端観光科学研究所 第1回研究カンファレンス

国立大学法人金沢大学では、文理医融合による観光を科学的に研究推進する「先端観光科学研究所」を令和5年4月に創設しました。新しい観光科学研究の未来について討論していく第1回目となる研究カンファレンスが企画され、当ウェルネス研究分野の荒川雅志教授が基調講演として講演しました。

荒川教授からは「Perspectives on New Wellness Tourism in the Context of Shifting Definitions of Wellness and Wellness Economic Trends./ウェルネスの定義の変遷、ウェルネス経済動向を背景とした新ウェルネスツーリズムの視点」と題し、時代、社会背景によりウェルネスの定義が変遷してきたことや、健康医療福祉を中心としたウェルネス産業市場が近年ではライフスタイル産業をはじめ多様な分野に拡がり、余暇・レジャー産業へも拡がりとしてウェルネスツーリズムが登場してきたことから、ウェルネスツーリズムの定義、解釈には観光分野の一形態としての理解ではなく、ウェルネス分野からの視点が不可欠であることを提案しました。

また、農業、建築、都市計画などの分野で先行しているリジェネレーション(再生)のコンセプトが近年観光分野にも取り入れられ、「リジェネラティブツーリズム/トラベル」(再生観光)が持続可能観光の発展形としてアフターコロナでは取り組まれていく動きを紹介したうえで、ウェルネスを「人の再生」と位置づけ、内部環境の再生(健康、ウェルネス)、外部環境として自然の再生、地域の再生とあわせた3つの柱による“Regenerative Wellness Tourism” (再生ウェルネスツーリズム, 荒川2023)の地域実践を提案しました。

金沢大学先端観光科学研究所は文理医融合による「観光を科学」する日本の観光研究の先進をいく日本で最も新しい組織であり、基調講演Ⅰではレジャー行動及び高齢者の健康行動に関する研究の第一人者・韓国延世大学のJinmoo Heo教授をお招きするなど、アジア世界研究ネットワーク構築も進めるなか、当琉球大学ウェルネス研究分野としても特にヘルスツーリズム、ウェルネスツーリズムのエビデンス(医科学的根拠)の分野で連携させていただくことを期待しております。

(開催概要)

先端観光科学研究所第1回研究カンファレンス

テーマ:文理医融合による観光科学のPast, Present, and Beyond
日 時:2023年 12月4日(月)14:00~16:50
場 所:金沢大学自然科学系図書館棟大会議室 (オンライン併用)
主 催:金沢大学先端観光科学研究所

(プログラム)

開会挨拶 和田隆志 金沢大学長

研究所概要説明
堤敦朗 金沢大学先端観光科学研究所所長

基調講演1 JinmooHeo教授(延世大学教授・先端観光科学研究所客員教授)

基調講演2 荒川雅志教授(琉球大学国際地域創造学部ウェルネス研究分野)

パネルディスカッション

コーディネータ:山田菜緒子准教授(共感研究部門)
コメンテーター:清水哲夫特任教授(東京都立大学都市環境学部観光学科教授)
松田真希子客員教授(東京都立大学人文社会学部教授)

報 告

野村章洋准教授(共感研究部門長)
「ヘルスツーリズムの基盤形成とウェルビーイングの医学的背景の解明」

藤生慎准教授(移動研究部門長)
「クルーズ船がもたらす経済効果と移動研究」

丸谷耕太准教授(共有研究部門長)
「移動が容易になった社会における多様な居住と地域の受容性」

閉会挨拶 中村慎一 金沢大学理事(研究・社会共創担当)