アジア沖縄海洋療法研究開発センター拠点

海洋療法沖縄ウェルネスリゾート連携

私たちは、全国の海洋療法施設、タラソ併設宿泊施設等と連携し、医科学的根拠に基づく海洋療法の効果に関するデータベース構築をすすめています。

海外・国内医学系論文データベースにアクセスし、海洋療法の種目別に見た効果効能、対象層別、疾患別のエビデンステーブルを構築し、定期的に更新する機能を整えています。データベース構築とともに、効果検証に基づく海洋療法(タラソテラピー)プログラムの開発も沖縄県内の海洋施設にて開始しています。

今後さまざまな疾患、年齢層を対象に海洋療法エビデンスを蓄積するだけでなく、観光への応用などアジア太平洋島嶼地域の海洋療法研究センター拠点としての機能整備を目指します。

海洋療法

荒川雅志 Masashi ARAKAWA, Ph.D.

タラソテラピーとは

タラソテラピー(Thalassotherapy)とは、ギリシャ語のthalasso(海)、フランス語のtherapie(治療)の複合語で、日本では「海洋療法」と名付けられている。フランス医学アカデミーの定義によると「海洋気候の作用の中で、海水、海藻、海泥を用いて行う治療」とされている。海洋療法は海を活用した「自然療法」であり、美しい自然の海洋環境がもたらす快適性や海洋生物などの資源を最大限活用して心身を癒すものである。現在、世界には260を超えるタラソ関連施設、併設ホテルが存在する(図1)。この分野での先進国であるフランスやドイツでは医療機関への併設や一部保健適用がされるなど現代西洋医学との融合が図られている。

四方を海に囲まれた我が国でも古来より海を治療に用いていたことは容易に想像されるが、江戸期において民俗学的事象として病気治療のための海水浴(潮湯治)が行われていたとの記述が存在する。現代型の施設併設型タラソテラピーは1990年代後半より海外事例を参考に全国的に導入が始まり、現在では全国に26の健康増進型施設、タラソ施設併設ホテルが存在している(図2,H20年時点)。地域別では九州・沖縄に最も多く、次いで四国と、半数以上が西日本に存在している。

こうしたなか我が国に海洋療法施設、併設ホテルが意外にもこれほど多いこと、アジアでは最大であるといった事実は日本国内および世界的にもほとんど知られていない。欧州でのタラソテラピーの長年に渡る臨床研究の蓄積の歴史、地域医療として根差した普及に比べ、日本ではまだ日が浅く、その様々な効能効果について科学的根拠に基づく検証は始まったばかりである。

健康増進型施設、タラソ施設併設ホテルが存在

海洋療法研究の取り組み ~アジア最大級のタラソテラピー研究センター拠点構想~

海水の特性を活かすアクアプログラム研究開発と地域保健実践

近年、我々は沖縄県内の海洋療法施設の協力を得て、海洋療法の効果検証に基づく海洋療法(タラソテラピー)プログラムの開発を開始した。検証の多くは研究妥当性階層で上位の無作為化比較試験(Randomized Controlled Trial:RCT)を基本デザインに採用し実施してきている。介入研究と併せて、海洋療法の種目別に見た効果効能、対象層別、疾患別のエビデンステーブルを構築し、定期的に更新する機能を整えつつある。今後さまざまな疾患、年齢層を対象に海洋療法エビデンスを蓄積するアジア太平洋島嶼地域の海洋療法研究センター拠点としての機能整備を目指している。

WATSUによる軽うつ、睡眠の改善効果

これまでのRCT介入試験では以下

  • 高齢者の日常生活体力機能向上(ADL)の効果
  • 睡眠の質的改善効果
  • メタボリック関連指標の改善効果
  • 精神安定作用の効果
  • ストレス軽減の効果
  • 不定愁訴の改善効果

などに一定の成果を得るとともに、継続的な研究体制づくりに向けて県内外および海外のタラソセンターとの連携を図っている。

沖縄には現在、アジア最大級の流水面積を誇る海洋療法施設や世界第2位の直接取水量を誇る海洋深層水施設、沖縄初のリゾートホテル併設型海洋療法施設が存在しており、当プラットホームではこれら施設との連携による研究開発(R&D)を進めている。

  • 医療法人タピックタラソセンター(アジア最大級の海洋療法施設:海洋療法の介入研究、地域健康・観光振興の実践モデル)
  • ザ・テラスホテルズ(ウェルネスアットブセナ:リゾートホテル併設型海洋療法施設:タラソウェルネスプログラムの共同研究開発)
  • バーデハウス久米島(世界第2位の海洋深層水取水を利用する施設:海洋深層水の効果研究、地域健康・観光振興の実践モデル)
  • ジェロントロジー総合研究所(沖縄海洋転地療法の共同研究)
  • ルーマニア国立抗加齢科学研究所(INGG:アンチエイジング先進研究機関、転地療法の共同研究)
  • 沖縄WATSUセンター(海水アクアセラピーの国内拠点。WATSUの精神生理効果研究)
  • THE HIRAMATSU HOTELS & RESORTS 賢島 THE THALASSO SPA(開業時プログラム開発指導、潮湯治スパコンセプト)
  • 米国ハワイ州立自然エネルギー研究所(Natural Energy Laboratory of Hawaii Authority;NELHA、沖縄ハワイ海洋ウェルネス産業の共同研究(県事業費採択))
海洋療法沖縄ウェルネスリゾート連携

海洋療法研究の発展的応用 ~海洋性ウェルネスリゾート(観光)の展開~

国土面積からみると我が国は世界で60位とアジアの小さな島嶼国であるが、海域・排他的経済水域を加えると実に世界第6位、面積当たりの海岸線延長は世界第3位の海洋国家である。海が人体に好影響を及ぼすことは人類文明の黎明期から経験知として存在し、医学の祖ヒポクラテスは実際の治療に用いていたとの伝えがあるが、わが国でも病気治療のための海水浴は“潮湯治(しおとうじ)”と呼ばれ伝承されてきた記述が江戸期の文献にみることができる。

長い歴史を通じて海との共生を果たしてきた経験と知恵、海にまつわる数々の物語を強みに、豊かな海を新たに“ウェルネス資源”として活かす知恵とセンスが必要である。タラソテラピー発祥の欧州の真似ではなく、アジアのメッカとしての新たなコンセプト、和の文化、古来より実践されてきた『潮湯治』(しおとうじ)の歴史に根差した日本型の海洋療法がここに待望される。豊かな海洋資源をウェルネス資源として最大限に利活用を図る“海洋ウェルネスツーリズム”を我々は提唱している。

リンクなぜ海は体にいいのか?~海洋療法と観光の融合をどう図る~

文部科学省科学研究費

2017-2019, 次世代ヘルスケアとしてのヘルスツーリズム研究, 基盤研究(C) 研究代表者 荒川雅志
2014-2016, メンタルヘルスツーリズムの展開, 基盤研究(B) 分担研究者 荒川雅志
2014-2016, ヘルスツーリズムの基盤構築, 基盤研究(C) 研究代表者 荒川雅志
2011-2013, ヘルスツーリズムの有効性に関する実証研究 , 若手研究(B) 研究代表者 荒川雅志

なぜ海は体にいいのか?
なぜ海は体にいいのか?
海洋深層水とは
海洋深層水とは
海洋深層水のエビデンスEvidence for Deep Sea Water
海洋深層水のエビデンス
Evidence for Deep Sea Water