ヘルスツーリズム大賞表彰式で基調講演

特定非営利法人日本ヘルスツーリズム振興機構の主催による第7回ヘルスツーリズム大賞・奨励賞表彰式(東京:2015年3月4日)で、当ヘルスツーリズム研究センターの荒川雅志教授が基調講演を行いました。タイトル「健康と美を求める旅~スパとヘルスツーリズムの関係と将来性~」と題し、近年成長著しいスパ(SPA)産業とヘルスツーリズムの関係を海外ヘルスツーリズムの定義をあてはめながら解説しました。

ハンガリー国ブタペスト大学のMelanie Smithら(2009)によるヘルスツーリズム提供の施設カテゴリにはスパ(SPA)が主要に位置づけられています。日本スパ振興協会の定義には「美と健康の維持・回復・増進を目的として、温浴・水浴をベースにくつろぎと癒しの環境と様々な施術や療法などを総合的に提供する施設」とあり、こうした施設への移動滞在が海外ではヘルスツーリズム、あるいはウェルネスツーリズムとして認知されていることが多く見受けられます。我が国では、観光立国宣言をもとに「ニューツーリズム」のひとつとしてヘルスツーリズムは挙げられ、主に地域活性の視点と期待を背負った新しい観光形態として現代に再登場を果たしたといえます。

こうしたなか、平成26年6月に閣議決定の「『日本再興戦略』改訂-未来への挑戦-」では、“健康寿命延伸産業”が、医療費削減、新たな市場創出、雇用の拡大、による経済成長の一石三鳥の効果ができる分野として期待され、とりわけ「ヘルスケア産業の育成」を図ることが明示されています。具体的施策のひとつとして、糖尿病予備群を対象にホテル・旅館などの地域観光資源等を活用する「宿泊型新保健指導プログラム」の普及促進が挙げられています。健康医療分野と観光関連分野の「多職種、多業種連携」が新たな保健指導アプローチになり得るという国の政策にヘルスツーリズムに大きな期待が寄せられていることを報告しました。先行事例としてJTBコーポレートセールス、JTBヘルスツーリズム研究所、日本健康開発財団と琉球大学で昨年採択された厚生労働省補助事業「沖縄における宿泊型の新たな保健指導プログラムの開発と効果検証・事業可能性検証事業」での実際のモニターツアーの様子を紹介し、宿泊型保健指導プログラムに求められる要素を解説しました。

宿泊型でも「保健指導商品」であるならば医療従事者の役割が最重要であることを解説したうえで、そこに「ツーリズム」がどう寄与できるかについて、荒川教授は「旅の楽しさや転地によるリフレッシュで癒しを提供する旅であることはもちろんのこと、忙しい日常からふと立ち止まるきっかけとしての旅であり、そして何度も帰って(還って)くる旅、すなわちヘルス・ウェルネスツーリズムは『日常の延長』という考え方で人々の人生の中に組み込まれる」という新しい視点を提案しました。

式当日は全国各地からヘルスツーリズムを推進する事業者、自治体関係者ら、歴代ヘルスツーリズム大賞の受賞団体の方々が参集し、活発な意見交換、交流場面がみられました。

健康と美を求める旅~スパとヘルスツーリズムの関係と
生来性への期待
地域資源(自然・食・文化・人)と医療人材の融合ツーリズムは新しい保健指導、新ヘルスプロモーション
健康は日常、「日常の延長」という旅、健康点検・発見の旅へ
健康は体内環境調整保全というサステナビリティ(持続可能)
第7回ヘルスツーリズム大賞表彰式
奨励賞受賞「伊豆かかりつけ湯協議会」