沖縄の美容・健康素材

沖縄の美容・健康素材

沖縄素材の潜在力とは
What is the potential of Okinawan materials?

亜熱帯海洋性という気候特性、島嶼という固有の生物多様性環境のもとに育まれた天然素材は沖縄素材のなによりの大きな魅力です。

注目すべきは、こうした素材の成分分析、機能性、そして健康や美容に着目した効果が明らかにされはじめたのは、沖縄ブームが本格化した2000年代からと、つい最近であることです。

すなわち、まだまだ解明されていない沖縄素材や素材の潜在力が潜んでいる可能性があり、今後、掘り起こされていくことが期待されます。

They have a unique charm because they grow under a subtropical marine climate and have the biodiversity of the islands.

It’s important to note that the benefits and effects of these materials on health and beauty have only been explored since the 2000s, during the Okinawa boom.

This means there’s still a lot to discover about their potential.

医食同源の思想
The Philosophy of “Food and Medicine”

古来より沖縄の人々は地域の食材を経験的に健康や美容に生かしてきた事実があります。

琉球王国大交易時代の中国との関係で、食は薬=「医食同源」の思想が根付いて現代に引き継がれていることも、もっと知られていい沖縄の特徴的な食文化でありましょう。

It is a fact that since ancient times, Okinawans have empirically utilized local ingredients for health and beauty.

It is also a characteristic of Okinawa’s food culture that the idea that “food is medicine”, or “medicine and food are of the same origin,” took root in Okinawa’s relationship with China during the great trading period of the Ryukyu Kingdom and has been passed down to the present day.

世界一長寿地域を支えた沖縄の食
Okinawan Food Contributed to the World’s Longest Life Expectancy

こうした沖縄固有の天然素材を良薬や伝統的な健康美容法としてライフスタイルとして育んできた結果、世界一の長寿地域をかつて達成したことは、沖縄素材の力の証といえるでしょう。

若々しく健康的な肌や身体を保つ秘訣として、沖縄の天然素材、沖縄の食文化に注目が集まっています。

The fact that Okinawa once achieved the highest longevity in the world is a proof of the power of Okinawan ingredients, which have been developed into a lifestyle of good medicine and traditional health and beauty practices.

The natural ingredients of Okinawa and its food culture are attracting attention as the secret to maintaining youthful and healthy skin and body.

情報ストレス社会に見直される
沖縄ライフスタイル
Okinawan Lifestyle Gains Attention in Today’s Information and Stress Society

高度情報社会、変化の早い現代社会のなかで、本来スローであった日本人の生活習慣もファーストなライフスタイルに変わっていきました。

長寿県といわれた沖縄でも欧米型食スタイルの波にさらされ、若い世代の健康は危ぶまれています。一方で、沖縄のスローな精神性、社会、ライスフタイルはまだ健在です。

慌ただしく時間に追われることのない「沖縄タイム」があり、日が昇れば活動し、日が落ちたら体を休めるというように、自然のリズムに逆らわない暮らしがここにはあります。ありのままの自然に身を委ね、地域の伝統的な行事は盛んで、ソーシャルネットワークに支えられ、ストレスが少なく人々は活き活きとしています。

環境や健康に配慮した新しい価値観に基づいた消費行動、投資行動は世界的なトレンドになりつつあります。消費を抑制し、余暇を多く持ち、スローな生活で家族友人との時間を多く持つほど豊かな人生価値と考える、次代のライフスタイルを志向する層がこれからますます増えることでしょう。こうしたライフスタイルを沖縄人は当たり前のものとして実践してきました。

In today’s highly information-oriented and fast-changing society, the originally slow lifestyle of the Japanese people has been replaced by a fast-paced lifestyle.

Even in Okinawa, once known as a prefecture of longevity, the health of the younger generation is in danger as they are exposed to the wave of Western eating styles.

On the other hand, Okinawa’s slow mentality, society, and lifestyle are still alive and well.

There is an “Okinawa time” that is not hurried and time-pressured, where people are active when the sun rises and rest when the sun sets.

People are relaxed and comfortable in the natural environment, traditional local events thrive, and social networks support a low-stress, energetic lifestyle.

Consumption and investment behavior based on new environmental and health values is becoming a global trend.

More and more people are becoming oriented toward next-generation lifestyles, which are less consumptive, have more leisure time, live slower and spend more time with family and friends. Okinawans have been practicing these lifestyles as a matter of course.

沖縄リジェネラティブウェルネスツーリズム
Okinawa Regenerative Wellness Tourism

亜熱帯海洋性気候で温暖な沖縄への観光者数は年々伸びています。

訪問者だけでなく、定年後の第2の人生や、豊かな自然環境で子供たちを育む次代のライフスタイル実現を志向した移住者も年々増えています。

新たなライフスタイル実現の移住とまではいかなくとも、忙しい都市型ライフスタイルの日常に時にふと立ち止まって、沖縄に触れる気づきの旅はいかがでしょうか。

沖縄の持つ天然素材の力に触れ、体験、体感することで、次代の生き方を考えるうえで沖縄という場、素材は、人それぞれに新たな視座、示唆を与えてくれるものと私は考えています。

The number of tourists to Okinawa, with its subtropical oceanic climate and mild climate, is growing every year.
In addition to visitors, the number of people who migrate to Okinawa to live a second life after retirement or to realize the next generation’s lifestyle of raising children in a rich natural environment is increasing year by year.

In order to realize a new lifestyle, how about taking a trip to Okinawa to discover the island, even if not necessarily to emigrate, but to pause from your busy urban lifestyle?

I believe that by directly touching and experiencing the power of Okinawa’s natural materials, you will be healed in body and mind, and will be inspired to think about the next generation’s way of life, giving you new perspectives and suggestions for your after-corona way of life!

著者紹介

琉球大学国際地域創造学部 ウェルネス研究分野
ブルーゾーン沖縄研究センター
教授 医学博士 荒川 雅志
沖縄100歳長寿者のライフスタイル、沖縄の美容と健康素材の研究で福岡大学大学院医学研究科社会医学専攻修了。医学博士。食、運動、休養をテーマとした観光「ヘルスツーリズム」を日本の大学で初めて開講。ヘルスツーリズム、ウェルネス研究、ウェルネスツーリズム研究の第一人者。海洋療法学者。
全米ビジネス書ベストセラー『The Blue Zones(ブルーゾーン) 2nd Edition世界の100歳人に学ぶ健康と長寿9つのルール』翻訳・監修。

≪Author Profile≫

Masashi Arakawa
Professor and Dean
Blue Zone Research Center, Wellness Research Fields, Faculty of Global and Regional study, University of the Ryukyus.

Born in Fukushima Prefecture in 1972. He completed his studies at the Graduate School of Medicine at Fukuoka University, specializing in social medicine and epidemiology. His research centered on the lifestyles of centenarians in Okinawa, one of the world’s five “Blue Zones” known for longevity, and on Okinawa’s beauty and health ingredients. With a doctorate in medicine, he is a leading expert on wellness research and wellness tourism originating from Japan, and he is also a scholar in thalassotherapy.

He translated and supervised the U.S. business bestseller, “THE BLUE ZONE, 2ND EDITION: Learning Health and Longevity from the World’s Centenarians The Nine Rules.”

  • 平成25年農林水産省「食のモデル地域育成事業実施計画『南城市食のモデル地域実行協議会』」委員
  • 平成26年農林水産省「フードチェーン食育モデル事業ごちそう様の精神を育む食育活動事業」検討委員
  • 平成27年沖縄県「沖縄食文化の魅力味わい事業」検討委員会委員(座長)
  • 平成28年度沖縄県「沖縄食文化保存普及継承事業」検討委員会委員(議長)
  • 沖縄ブランドWELLNESS OKINAWA JAPAN認証制度審査員
  • 沖縄健康長寿弁当共同開発(琉球大学、一般社団法人 食の風との共同)
  • 一般社団法人 琉球料理保存協会 顧問


荒川先生がすすめる「沖縄の注目素材12*」

*週刊女性 第60巻21号(2016年5月31日号)依頼原稿より抜粋
*素材写真は沖縄TLO、ピパーツはハーブ研究家 嵩西洋子氏、クワンソウはソムノクエスト(株)、クチャはIsland Aroma(アイランドアロマ)より御提供

ハイビスカス 【特徴・効果・活用法】

南国沖縄を想起する真赤な花のハイビスカスは観賞用で、美容や健康効果に利用するのはローゼル種というハイビスカスを利用します。クエン酸を多く含み、新陳代謝、乳酸代謝を促進する効果があり、疲労回復や肌活性が期待されます。またビタミンCやミネラルを豊富に含んでいるので、シミやくすみの元となるメラニン生成を抑制したり、還元作用による美白効果が期待されます。主にハイビスカス(ローゼル)ティーというハーブティーとしての飲用が一般的です。サプリメントタイプに加工されたものもあ

クミスクチン 【特徴・効果・活用法】

花から伸びたおしべが髭(ひげ)に見えることから猫の髭(ネコノヒゲ)とも呼ばれる、沖縄三大薬草の一つです。クミスクチンにはミネラルが豊富ですが、特にカリウムが豊富で、カリウムは余分な水分やナトリウムを体外に排出する働きがあり、利尿薬、腎臓の病に古来よりヨーロッパ、アジアで利用されてきました。クミスクチンにはまたロズマリン酸という抗酸化作用をもつポリフェノールの一種が含まれています。ロズマリン酸は脂肪分の吸収を抑える機能があり、肌の不要な皮脂を抑え美肌効果、ダイエット効果が期待されます。沖縄ではクミスクチン茶として広く愛飲されています。

ピパーツ(島こしょう) 【特徴・効果・活用法】

石垣、八重山地方で昔から使われてきた島胡椒です。古くは生薬として健胃、整腸に用いられてきたといわれています。ピペリンという辛味の主成分の含有量は黒胡椒を上回り、発汗作用が高く、新陳代謝を促す効果、消化を助ける働きから美容と健康効果が期待できます。血行を良くすることで自律神経を調整する効果、冷え症にも効果的とされます。八重山では料理には欠かせない調味料として、沖縄そばや炒め物によく使われています。

ゴーヤー(ニガウリ) 【特徴・効果・活用法】

沖縄の人にとってもゴーヤーは最もポピュラーな島野菜です。ゴーヤーの苦みの主成分であるモモルデシンが肝機能を高め胃腸を刺激し食欲を増進させる作用があります。沖縄の人々は厳しい夏場を乗り切るための食養生法として経験学的にゴーヤーを食してきたともいえます。皮膚を健やかな状態に保つビタミンCはレモンの約4倍もありシミやソバカスの原因となる紫外線のダメージを軽減させる効果が期待されます。ゴーヤーの豊富なビタミンCは加熱しても壊れにくい性質があるので、ゴーヤーチャンプルとして食するのが一番でしょう。豊富なビタミン類による抗酸化作用と、モモルデシンなど特有成分の相乗効果で美肌アンチエイジングが期待できます。

クワンソウ(アキノワスレグサ) 【特徴・効果・活用法】

クワンソウは沖縄の方言で「ニーブイグサ(眠り草)」と呼ばれています。沖縄では昔からリラクゼーション効果、安眠効果が伝承的に伝えられていましたが、近年、クワンソウから抽出した成分ヒプノカリスエキスからは睡眠改善効果が認められています。睡眠は代謝や免疫、ホルモン分泌に機能し、快眠によって肌荒れ改善や予防が期待できます。葉は乾燥させてお茶として煎じて飲みます。茎や花は食材としてお浸しなどに用いられます。沖縄では伝統的に食されてきた地域固有の「島野菜」として伝統的農産物にも指定されています。

月桃 【特徴・効果・活用法】

月桃はショウガ科のハーブで、葉の成分にある消臭、抗菌作用が沖縄では重宝されてきましたが、近年は美容素材であることが大きく注目されています。月桃エキスにはタンニン類とフラボノイド類で構成されるポリフェノールが多く含まれ、抗酸化作用によりシワ、シミ防止、エイジングケアが期待されます。スキンケアとして月桃精油・月桃蒸留水を取り入れた化粧水、石鹸、アロマオイルなどで利用されています。食飲用には整腸作用が期待される月桃の種を食する食養生法もありますが、葉を乾燥させてハーブティーとして飲用するのが最もポピュラーです。

紅イモ 【特徴・効果・活用法】

沖縄の紅イモは紫紅色が濃い品種です。サツマイモより多くのアントシアニンが含まれているのが大きな特徴です。アントシアニンは抗酸化作用を持つ成分で、動脈硬化およびコレステロールの抑制効果があるといわれています。βカロチンやビタミンB1、ビタミンC、カリウム、マグネシウムなどの栄養素もたくさん含まれています。食物繊維も豊富で、肥満や便秘の解消、腸の病気予防にも効果的です。蒸して食べる一般的な食べ方とともに、色鮮やかさを生かしたタルトなど、スイーツ商品も生まれています。

パパイア 【特徴・効果・活用法】

沖縄では、まだ完熟する前の青いパパイアを野菜として食します。青パパイアには、パパインと呼ばれる酵素が豊富に含まれています。パパインはタンパク質、脂質、糖質を分解し消化吸収させやすくする優れた酵素で、黄色く熟するにつれて減少してしまう事が分かっています。ほかにもビタミンC、葉酸、カリウム、鉄分、カルシウム、食物繊維、カロチノイドなど健康と美肌のために有効な成分が豊富に含まれています。沖縄ではパパイン酵素が豊富なうちの青パパイアを、シリシリ(沖縄の方言で千切り)にし、サラダ、炒め物で食べる習慣が広く一般家庭に根付いています。

フーチバ―(よもぎ) 【特徴・効果・活用法】

沖縄のヨモギはフーチバ―と呼ばれ、フーチ(病気)を治すバー(葉)という意味で伝承薬草としても広く知られています。ビタミンA、カルシウム、カリウム、鉄分などを多く含み栄養バランスに優れ、整腸、食欲増進、血行促進、鎮痛、貧血改善など様々な薬効効果で民間療法的に用いられてきました。沖縄では普段は沖縄そばや雑炊に葉を刻んで入れたり、肉汁、山羊(ヤギ)汁などの臭み消しに食されています。薬草ハーブの効用としてお茶でもよく飲用されています。ヨモギ特有の匂いを活かした精油成分によるアロマや芳香商品にも活かされています。

モズク 【特徴・効果・活用法】

モズクは栄養価が高く低カロリーの優れた天然素材です。沖縄の亜熱帯海洋性気候下で育ったオキナワモズクが国内流通の約9割を占めます。注目すべき成分には水溶性食物繊維のフコイダンがあります。フコイダンには血糖値の急激な上昇を防き、血中コレステロール値を減少させる働きがあるため、肥満や糖尿病などの生活習慣病の予防に効果的とされています。フコイダンは抗酸化物質の一種でもあり、美肌効果に機能することが考えられます。酢の物などで食するのが主ですが、化粧材としての活用も多くみられます。

クチャ 【特徴・効果・活用法】

数百万年前の古代の海泥で、沖縄では本島南部の土壌からとれる高純度の粘土鉱物の泥灰岩を「クチャ」と呼びます。沖縄では古くから美容洗顔や洗髪に愛用されてきた天然素材です。タラソテラピー(海洋療法)先進国のフランスでは“ファンゴテラピー(海泥療法)”と呼ばれ、専門医師の指導のもと一部保険適用も認められています。超微細な粒子で皮膚の細かいキメや毛穴の奥にまで入り汚れを吸着する優れた吸着効果の特性に加え、肌の性質を整える微量元素、ビタミン等の含有量が豊富で美容効果が期待されます。海泥パックによる発汗作用、代謝促進による痩身(ダイエット)効果も近年注目され、研究が進められています。

海洋深層水 【特徴・効果・活用法】

太陽光が届かず表層の海水と混ざらない水深200m以上の深海にある海水を海洋深層水と呼んでいます。清浄性が高く、無機栄養塩類が豊富でミネラルバランスが高いなどの特性があります。海洋深層水に含まれる微量元素や富栄養のミネラルバランス特性により肌細胞の新陳代謝を促進させる効果、優れた保湿作用が期待でき、化粧水や美容液など化粧品関連の成分として多く利用されています。亜熱帯海洋性で汚染のない清浄な海域にある沖縄には日本で最大級の海洋深層水取水施設があり、化粧品をはじめ、飲料、食品、水産加工や新エネルギー分野での産業応用が広がっています。