一般社団法人全日本社寺観光協会が全国の寺社向けに発行している専門誌「寺社NOW」Vol.30号(2020年3月発行)にて「寺社とウェルネス(ツーリズム)」という企画に当ウェルネス研究分野の荒川雅志教授への依頼原稿が掲載されました。『寺社がウェルネスに取り組む意義と地域貢献への可能性』と題し、
○ウェルネス(ツーリズム)の今
○なぜこれからウェルネス(ツーリズム)が重要なのか
○寺社がウェルネスに取り組むことの意義、について解説しています。

◒聖地を目指す「巡礼」はウェルネスツーリズムの起源のひとつといえます。世界各地にみられる巡礼は、聖なるものに接近し、魂の安寧、癒しを得る旅でもあります。交通が発達していない古代では、数年をかけて聖地を目指す旅となる、それはもはや人生の一部に組み込まれたものであります。キリスト教の三大聖地であるローマ(バチカン)、エルサレム、サンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼、イスラム教ではメッカへの巡礼、ヒンドゥー教徒にとってはガンジス川、ヒマラヤという大自然そのものが聖なる目的地となります。雄大な自然、人類の営みの歴史で特別な意味を持つ土地を訪れることは、魂を癒すとともに、内なる自分と向き合う時間、過去、現在と向き合い、未来の生き方をデザインするための心身にとって大切なひとときとなるでしょう。
◒寺社はそもそも人々が健康や病気平癒を祈願する場所でもあり、そのために寺社への巡礼が生まれていった歴史があります。世界中そして日本全国津々浦々にある寺社は、地域にとって、訪れる人にとって、その人のライフスタイルや人生に組み込まれる大切なウェルネス・ディスティネーション(目的地)になり得ると考えられます。寺社が第3の場「ウェルネスサードプレイス」という、心身の健康はもとより、自分の原点に還る場、自己開発、自己実現を図ることができる場、そして、何度も帰る場として人々の人生に組み込まれていく価値を提案することができます。それは都市と地域の人々の拠り所であるとともに、地域のウェルネスメニュー開発に関わる事業者、異業種とのアライアンス(連携)を生み出す場、シナジー(相乗効果)を生み出す起点という価値も提案できます。寺社が地域の産業活性の起点となる新たな関係性と価値の創造、これは地域の疲弊を救う地方創生に資するものでもあります。
◒働き方改革、企業社員のメンタルヘルス対策、健康経営という国家的課題に対しても、寺社が果たす役割が期待されます。首都圏や都市型ライフスタイルで慌ただしい高度情報社会、競争社会に忙殺される人々に対し、地域固有の資源を「ウェルネス資源」として掘り起こし、企業社員のメンタルヘルスや生産性向上に寄与するウェルネスツーリズムとしてプログラム化する、これを提供する中心(センター)が寺社であっていいと思います。
寺社が自ら積極的にウェルネスに取り組むことによって、地域と社会、国家的課題解決に寄与する立場になる、寺社の新しい役割の創出は寺社活性化にも繋がるものと考えられます。